2008年04月26日

自転車推進議連総会

 2008年4月24日午後4時〜5時、自転車活用推進議員連盟2008年総会が衆議院第一議員会館第一会議室で行われた。自転車活用推進議員連盟(谷垣禎一会長、原田義昭事務局長)は1999年に設立され、「自転車の更なる活用を促すため国の政策として法令の整備、規制の緩和、予算の確保、21世紀の人に優しい町作り、国民への啓蒙普及を図る目的を達成するため」に結成された、国会議員から構成される超党派の団体である。4月23日現在国会議員95名、及び千葉県知事がそのメンバーである。たまたまある機会からこの総会にオブザーバーとして出席することが可能となった。

 谷垣会長及び小杉隆名誉会長から開会の挨拶があった。谷垣会長の挨拶は、道路は今のままでは自転車活用に生かせず、道路特定財源からの自転車促進のための道路整備という話もあった。都市交通の中で自転車がしっかり走れる環境についてすすんできたこともあり、その点の事情もうかがいたいという趣旨のものであった。小杉名誉会長からの挨拶は、自転車を巡る環境も変わってきたのでとくと聞いてみたいというものであった。

 まず、自転車活用推進研究会石田久雄氏から、自転車を巡る近況報告があった。それによると
@ 本年6月の道路交通法改正について。これにより自転車の歩道通行の要件が明確化され、「著しく危険な場合」には自転車の歩道通行が認められることとなったが、「著しく危険な場合」を誰がどう判断するかは不明確であり、この点を明確にしてほしい。また、自転車は車道を走行するのが原則であるが、相変わらず警察官は歩道を走行しており、また警察官が自転車用の手信号をしているのをみたことがない。このあたりは注意喚起してほしい。さらに、自転車に幼児を乗せて3人乗りすることの容認論が一人歩きしており、このことを誰がマスコミに流したかを明らかにしてほしい。

A 全国98カ所を自転車走行環境整備のモデル地区として指定され、そのうち2カ所をみた。渋谷のモデル地区においては青で自転車レーンを車道上に設けたが、違法駐車や荷さばきの自動車があって自転車が走行できなくなっている。自転車レーン上の路上駐車禁止を徹底して欲しい。

B 自転車教育を徹底して欲しい。歩道上での自転車の並走、ベルを鳴らしながらの走行及びスピード走行があり、これまで以上に歩道があぶない。また、車道ではドライバーの自転車に対する幅寄せやクラクションがある。こうした点についての指導が必要である。

次に、政府側から自転車に関する施策の説明があった。

 国交省道路局地方道・環境課長徳山日出男氏から自動車走行空間モデル地区98カ所指定状況を中心とした5分ほどの説明が資料を用いながらなされた。それによると、自家用車から自転車利用への転換により、30万トンの温暖化ガス削減を目標としていることから自転車通行空間の整備を実践し、そのためのモデルとなる地区を全国98カ所に指定した。その態様としては、(1)自転車道の整備、(2)自転車レーンの整備及び(3)自転車歩行者道における通行位置の明示の3種類がある。最後に自転車道の先進事例としてパリの例が紹介された。

 警察庁交通局交通企画課長倉田潤氏から改正道路交通法6月施行準備状況や交通教則の見直しについての5分程度の説明が資料を用いながらなされた。
 それによると、道路交通法改正については、自転車は原則として車道を通行するが、例外として道路標識等により通行可とされている場合の他、13歳未満の子供、70歳以上の高齢者、身体障害者が運転する場合、及び安全な通行を確保するためやむを得ない場合に限り自転車の歩道通行を認める、という説明がなされた。
 道路教則の見直しについては、上記の自転車車道走行の原則と例外の他、「安全な通行を確保するためやむを得ない場合」の具体例として、「道路工事や連続した駐車車両等のために車道の左側の走行が困難な場所を通行する場合や著しく自動車等の交通量が多く車道の幅員が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車等の接触の危険がある場合」を定めた。併せて、歩道上での走行上の注意として、歩行者優先で走行すべきこと、歩道では徐行すること、歩道でみだりにベルを鳴らしてはいけないことを定めた。また携帯電話やヘッドフォンの使用をしながら運転をすべきでないことも定めた。

 さらに、文科省スポーツ・青少年局学校安全対策専門官梶山正司氏から学校教育における交通安全の現況が、経産省製造産業局車両課長若井栄二氏からツアーオブジャパン、サイクルスポーツフェスティバル、幼児二人乗用自転車の開発公募(幼児二人乗自転車試作を公募し、その費用の3分の2を出す)の報告がなされた。まさか経産省の役人がツアーオブジャパンなどと口走るとは思わなかった。

 さらに、第二東京弁護士会福井健策氏から、「従来型の自動車道一辺倒から脱して、自転車道の整備、公共交通の補助、環境対策など、環境・まちづくり面に十分な予算が割かれることが、本当に市民が望む選択である。こうした政策転換を求めて、第二東京弁護士会は政府・各政党に意見書を提出したので、是非、前向きに政策議論に反映していただきたい。」とのコメントがあった。

 最後に質疑応答が行われた。まず、有名な疋田智氏が先陣を切った。質問は2つある。
 一つは国交省のモデル98地区に関する質問。自転車利用による温暖化ガス削減のためには自動車利用から自転車利用への転換が必要である。そのためには、ある程度の速度の出せる道路を整備することが必要である。しかるに、モデル98地区の道路を見ると、岡山市の例では路肩を整備した自転車道の路面が歩道のように石畳になっていて走行しにくかったり、水戸市の例のように自転車歩行者道に単にペイントしただけで、自転車と歩行者の通行を分離することが困難となっていて自転車が本来の性能を十分発揮できない例があったりして、モデル98地区といっても自動車の代替交通手段としての自転車走行ができない事例があって問題ではないかということ。
 もう一つは、道路交通法上自転車が歩道を走行できる場合としての「安全な通行を確保するためやむを得ない場合」の具体例として、「道路工事や連続した駐車車両等のために車道の左側の走行が困難な場所を通行する場合や著しく自動車等の交通量が多く車道の幅員が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車等の接触の危険がある場合」と定めたことについて。昨年の自転車議連では「安全な通行を確保するためやむを得ない場合」は、「道路工事の場合」との説明であったが、今回の交通教則ではそれから大分変更されている。これはどういうわけか。また、もし交通教則のように定めると、通常道路はそういうところばかりで、結局の所自転車の歩道走行を原則として認めたのと何ら変わりはないのではないか、ということ。
 これに対して国交省の人はモデル98地区に関する質問に対し「歩道のように石畳にしたのは、そこが自転車走行スペースであり、駐車がされないように目立たせた趣旨。改善すべき点があれば改善していきたい。」と答え、警察庁の人は道路交通法上の質問に対して「これは決して歩道走行を原則的形態とする趣旨のものではない。あくまで自転車は車道走行が原則である」旨を答えていた。

 自転車専用のスペースをつくるのは結構であると思うが、自転車が自動車に代替できるような走行ができる実用的な走行スペースを確保すべきと思う。歩道にペイントを施してはい一丁上がりみたいな安直な施策は断固避けて欲しいものだ。もしそれができないのであれば、車道に自転車走行レーンを設け、その部分を駐車禁止にすることで自転車走行スペースを車道に作るべきであろう。
 
 また、「交通量が多くて狭い道であっても歩道走行を禁止にして車道だけ自転車走行させて、本当に事故の危険はないのか」と正面切って聞かれた場合に「それでいいのだ」と答えるのは躊躇するかもしれない。 しかし、そもそもそうした道において、自動車が自転車を追い越すときは十分な間隔をとるとか徐行をさせるとか、自転車に対する十分な注意義務を自動車に課するのが筋ではなかろうか。また、「連続した駐車車両のため左側の走行が困難な場所を通行する場合」とあるが、そもそも道路は駐車を目的とする場所ではなく、むしろ駐車できる範囲を狭めたり、徹底した駐車違反の取り締まりを行うことによって車道に自転車走行スペースをつくることが妥当であると思う。
 無論そうした取り組みは一朝一夕にはできるものではないが、それでもそうした方向の施策を続け、数年先には「安全な通行を確保するためやむを得ない場合」は、「道路工事の場合」に限られるようにしてほしいものだ。

 政府側からの自転車施策に関する説明については上記疋田氏の質問で私の問題意識は尽きたのだが、私はさらに一点、「交通教則では自動車の運転の方法に自転車の安全に対する配慮等を定めているが、二輪車の運転の方法にこれを定めなかったのは何故か」という質問をした。
 二輪車は自転車と走行空間を一にするにもかかわらず、自動車と同様のスピードと危険性を有するため、二輪車にも自転車に対する安全に対する配慮等をする必要性は自動車と同様にあると考えられるのである。
 これに対しては、警察庁の人は「原付などの二輪車に対する考慮を決して怠っているわけではなく、今後も自転車の安全に努めていきたい」という、回答になっていないような回答をもらった。警察庁は意図的に二輪の運転方法に自転車の安全に対する配慮等を定めなかったのではなく、おそらく二輪にまで気がつかなかったのだろう。そうだとすると、将来的には二輪についても交通教則で自転車の安全に対する配慮等を定めて欲しいものだ。

 さらに、谷垣会長から「右側通行する自転車は実に危険である。自転車の左側通行を徹底させて欲しい」とのコメントがあると、会場盛り上がって大拍手となった。確かにこれはその通りである。警察は二人乗りの自転車をみると目の色を変えて注意したり追いかけたりするが、実は二人乗り以上に危険なのが自転車の右側通行である。自転車議連で「自転車は左」が満場一致大拍手で強調されたので、警察庁もこれは無視するわけにはいかないだろう。

 他にも、成人の自転車走行の際のヘルメット着用についての意見や、車道を削って自転車道を設ける際、双方向の自転車道とするのは危険で問題があるのではないかなどの意見があった。
 自動車の代替としての自転車利用をするなら、それ相応の速度で走行するので、ヘルメットの着用くらいは義務づけてもいいと思う。また、双方向の自転車道を造る場合には、パッと思いつくだけでも、例えば@自転車道の幅員によっては、自転車がすれ違う際に接触などの事故が生じる。A左側通行が徹底されていない場合、衝突の可能性あり。B自転車道がガードレールに囲まれた場合、対向車が危険な走行をしたときに逃げ道なし、C自転車道が一方の車線にしかない場合には、他方の車線での走行ができなくなって不便、という問題がある。道路交通法上、自転車道を造る場合には双方向のものでなければならないようだが、この点は法改正を検討して欲しいものである。

 「自転車→歩道へ」の警察庁の動向に対する警戒を反映してか、昨年は道路交通法改正問題が警察庁の予想以上に盛り上がったため、昨年の自転車推進議連には、警察庁交通局長などかなり高いレベルの人が政府側から呼ばれ、かなり自転車フレンドリーな発言がなされた。今年は一応「自転車車道の原則」を前提として自転車利用を推進していくという方向性が定まったため、昨年のように警察庁交通局長のような大物は出てこず、比較的小物が現状の政策を示すにとどまった。今後はこうした政策に対してどのように利用者の声を届けるかが問題となりそうである。

 環境や健康によい交通手段としての自転車利用に対する国家的支援は大いにやってもらっていい。しかしそれは、自動車から自転車への転換というモーダルシフトを大前提とすること、そして自転車利用に対する国家政策については、実際に自転車に乗る人たちの意見を反映させたものであるべきだろう。98箇所モデル地域の指定や交通教則改正をみると、そこらへんについての考慮は不十分で、完成型にははるかに及ばない。自転車利用に対する国家政策をよりよいものとするため、自転車推進議連や自転車活用推進研究会にはがんばってほしいと思う。

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posted by goiss at 15:37| 東京 ☁| Comment(3) | TrackBack(1) | 自転車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
詳細レポートに感謝します。
Posted by at 2008年04月26日 17:40
相変わらず自転車業界の人たちの自己中心
的な発想にはいささかあきれる次第です。

とにかく自転車の高速走行ありきの議論を
している限りただのエゴイズムに過ぎない
と私には思われます(私は自分の責任で書
いています)。
Posted by 鉄下駄 at 2008年05月02日 13:32
>どなたかわかりませんが、私のレポートがお役に立てれば幸いです。

>鉄下駄サマ
コメントありがとうございます。自転車業界とはどの方々をさすのかよくわからないのですが、自転車利用推進の人たちということであれば、こうした人たちは自転車高速走行のみならず、自転車の走行空間確保、安全な自転車利用といった、自転車の交通手段としての総合的な地位向上を主張しているのではないかと思います。
Posted by goiss at 2008年05月03日 22:01
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Excerpt: 自転車活用推進議員連盟総会、24日開催。前回参加は昨年2月7日。 早くまとめねばと思うち、専門家による詳細な報告がすでに出されています。 「ゴイス日記」26日付「自転車推進議連総会」を併せてご覧下さ..
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