【スタートまで】
さて5月14日はBRM514沼津クラシック600kmブルベの日である。ブルベとはAudaxJapanが主催する長距離自転車走行会である。そこでは主催者の定めた一定の距離を有する一定のコースを一定の時間内に走行すれば、完走と認定される。レースではないので順位はつけない。今回のBRM514沼津クラシック600kmブルベでは、これを主催するAudax神奈川が定めた600kmあるコースを40時間内に走行すると完走と認定される。
このブルベでは午前6時に沼津にある学習院遊泳場をスタートする。そのため前日に沼津入りする。この日は午後休みを取ってブルベの準備をする。その上で17時26分こだま号名古屋行きに乗って三島まで行き、そこで東海道線に乗り換えると19時前後に沼津に到着する。この日はホテルニューオータケに宿泊する。ごく普通のビジネスホテル。ここは朝食に焼いたアジを出し、これが結構おいしいのだが、5月14日ブルベ6時スタートのためそれを食べられない。
5月14日4時頃起床する。前日買っておいたサンドイッチやおにぎりで朝食を済ませ、5時ころ家内とともにホテルから5kmほど先のスタート地点の学習院遊泳場に自転車で向かう。ゆっくり目に行って大体15分〜20分くらいでそこに到着する。
学習院遊泳場にはいくつか木造平屋建ての建物が点在していて、そのうちの一つをAudax神奈川が借り切って受付や仮眠・宿泊スペースとしてが使っている。今回のブルベを仕切っているAudax神奈川の本多さんが学習院大学のご出身ということで使用しているようだ。そちらで受付を済ませ、顔見知りのブルベの方々にご挨拶をする。
今回のブルベではおよそ50名程度の参加者がある。ワタシがブルベに参加し始めた5年ほど前だと、結構50代を超える年配の方が多かったが、最近は30代くらいの方々の割合が多くなった。ブルベ人口の増加に伴い様々な年代の方々が長距離サイクリングを愉しむことになるのは誠に結構な話である。
スタート20分前ほどになってブリーフィングが始まる。今回のコースを初めて走るという人は意外と多いので、割合詳細なコース案内を本多さんが行う。その後自転車の車検をして適宜スタートである。
ワタシはこの日家内と一緒にこのブルベに来ているが、家内とは一緒に走らない。家内とワタシとの間に走力に開きがあるため、一緒に走行しても面白くないからである。どうもブルベにおいて夫婦は一緒に走るものという風潮があるようだが、ワタシはその考えを取らない。
夫婦の生活は二人三脚であるが、二人三脚ということは片方の足は自由ということである。そして、自転車は個人の趣味の領域であってまさに自由な足の範疇に属する事柄である。夫婦で同じブルベに出ているからといってことさらに一緒に走行しなければならないというものではない。
今回のブルベにおいても、別に家内と一緒に走るためにわざわざ同じブルベに出ることを選択したのではなく、家内とワタシが別々にどのブルベに出るかを検討した結果、タマタマぐーぜん同じブルベに出るにいたった、という、それだけのことである。
【スタートから第1CPまで】
ブルベ出走のためには必要な装備がいくつかあって、それをチェックしてもらう検車をしてもらったあと適宜出発である。これから600kmもの道のりを自転車で走行するというちょっとした大人の冒険の始まりである。スタート地点から少し走行した後家内に「じゃぁまたね」と声をかけてヒョイと追い越していく。
スタートから5kmほどまでのところは沼津市街地である。ここまでは信号が随所にあるので、控えめのスピードでの走行である。そこを過ぎると10kmほどの間右手に松林が展開し、信号が少なくなって気分よく走行できる。
従前だとここを走行していると、時速40km近いスピードで疾走する5人くらいで走行する列車がヨコを通り過ぎるので、遅れてはならじとワタシもその後をついて走り、以下時速40km近いスピードでドヒャーと数十キロ走行したものであったが、今年はそうした爆走列車を引く人がいないので、時速30km〜35kmの穏当な走行である。
10kmほどの松林区間を抜けると富士市街に入り、信号や交通量が増えるため若干スピード落とし目の走行になる。大体時速30km前後くらいの感じ。走っていてあまり面白い道のりではない。そこを大体10kmほど走行して富士川橋を渡る。
富士川を渡ってT字路を左折すると比較的交通量が少なくなって走行しやすくなる感じ。そこを10kmほど走行した後に由比近辺から右側の旧街道に入る。国道1号線は交通量が多いため西倉沢までこの旧街道で行く。
この旧街道に入るところを間違えて直進する人が結構多い。目印としては、旧街道に入るところの手前に、「薩堆峠 100m」の標識があり、かつ右側の旧街道への分岐点に「くらさわや」の看板が電柱に貼ってある。しかしキューシートには書いていない。そのため旧街道への入り口がわからない人が結構いる。このコースを複数回走行している人だったら分岐点はわかるだろうが、初めて走行する人だとこの分岐点はちょっとわからないだろう。この目印をキューシートに書いておくのが適切だと思う。
西倉沢まで行くと踏み切りに突き当たり、その踏切を越えたあたりの押しボタン信号を渡ったあとガードレールの切れ目から国道1号線の側道に入る。そこを数キロ走行した後再び国道1号線に入る。するとそこいら辺が興津中町交差点なので、それを直進して国道149号線に入る。そこをしばらく走行すると、清水の市街地になる。そこにはミニストップがあって、かつてはそこが第1CPであったが、ここ2年くらいの間はそこはCPとして使用されていない。
清水の市街地を抜けると海岸線沿いのいわゆるいちごロードに入る。ここは例年左手に大海原を見つつ高速での自転車走行が楽しめた。ところがこの日予想外の激烈な向かい風が吹きつけて行く手をさえぎる。しかも向かい風をさえぎるものが何一つとして存在しない。そのため全くスピードが出ない。時速23km程度のスピードがせいぜいという感じである。
いちごロードを道なりに走行すると、先のほうに新しい道ができていた。従前いちごロードから大浜橋T字路交差点を右折し、西野交差点を左折していた(ここでまっすぐ行き静岡市内に行ってしまったことがあった)が、現在はその新しい道をまっすぐ行くと中島交差点につきあたり、そこを左折して走行すればよくなっている。昨年と若干この点のコースが違う。
中島交差点から2kmほど走行すると広野交差点(五叉路)に突き当たる。昔ここを間違えて直進し、日本坂トンネルを走行したことがあった。しかしブルベ上は左から2番目の県道416号線に入って大崩海岸に向かうコースである。
大崩海岸では、海の上に橋がせり出ていてまずはそこを走行する。で、次に2〜3kmほどなかなか上り甲斐のある坂を上る。その坂を上りきってドヒャーと下ると、焼津市街地に入る。
そこを抜けて走行距離が80kmを超えた後、名前のない、ファミマが左前方にある交差点を右折して御前崎方面へと向かう。ここで、キューシート上右側にアイメガネのある交差点を左折することになっていたが、そこをうっかり通り過ぎてしまった。それでも前方に「御前崎」方面の標識がみえた。ブリーフィングのときは、コースを間違えてもとにかく御前崎の標識に従って走行すればよいとのことだったので、「御前崎」方面の標識にしたがって道を歩むことを心がける。その結果もとのコースに復帰できた。
あとはこの道をまっすぐ20km少々走行すれば第1PCに到着である。昨年のこのブルベでは、走行コンディションに何の問題もなかった。そのため、リュウさんが時速40km位でひくトレインが爆走していた。そのトレインについていたワタシは、「このオヤジたちどうかしているよ」と思いながら走行していた。しかも、そのトレインの速度に不満をもっていると見えて、後方をふりかえり、すきあらばトレインから離脱して一気に先行しようと様子をうかがっているブルベキングIDさんの姿もあった。
ところが昨年とうってかわって今年はいちごロードから始まった向かい風が依然としてここにきても追求の手を緩めず吹きまくっている。そういうわけでとても時速40kmのトレインどころの騒ぎではない。およそ時速23km前後での走行である。
このあたりは牧の原市であるためお茶で有名なはずだが、別に道路から茶畑の風景が楽しめるというわけではなく、走行していてそれほど面白い道というわけではない。
牧の原市を10kmほど走行したであろうか、徐々に前方に新緑もえる岡が迫ってくる。そして、その岡の上には風力発電のための装置がニョキニョキと立って風車をまわしている。風力発電を行うような場所だから、もともと風は強い場所なのだろう。しかし今年は例年になく強い風であり、かつ例年にない向かい風である。いちごロードからもう数十キロ向かい風に吹かれっぱなし。
向かい風の中辛抱しながら走行していると、道路わきに南方系の樹木が徐々に増えてき、やがて「御前崎市」の表示が見えて御前崎市に入ったことがわかる。そうすると、残りあと5km位で第1PCである。依然として向かい風は追求の手を緩めないが、あと5kmなのでもう一息がんばろうという気になる。
右手には新緑もえる岡、左手には海原を目の当たりにしながら淡々と自転車走行し、第1CPのセブンイレブン御前崎港店に到着する。大体午前10時40分くらいの到着であったと思う。先行していた二名のブルベの人が休憩を終えて出発しようとしていたところであった。そして、私が休憩していた間三々五々という感じでブルベの人たちが到着する。
その時それほどおなかが空いていたというわけではないし、次のCPまでそれほど距離はないので、ボトル用の飲み物を買って一休みした後第1CPを後にする。
第1CPまでの区間は、いちごロードのあたりからとにかく向かい風に悩まされっぱなしの区間であった。しかしブリーフィングで本多氏が、「この雲行きだと御前崎あたりまでは向かい風だが、その後森あたりからは追い風になります」と述べていたので、これからは追い風で楽ができるだろうと思っていた。しかしその予想は見事に外れることになる。
(つづく)

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