【スタート〜第1CP】
さてスタートからしばらくの間若干のアップダウンがあるほかはしばらく平坦基調でスイスイと走行する。スタート当初は十数人ごとの隊列で走行するのだが、若干のアップダウンや信号の間に隊列がバラける。10kmも走行すると早くも一人旅の様相である。
スタートから13.5km行ったところにある名古木交差点を左折してからのぼり基調になる。ここからヤビツ峠までの10km位の間、若干の平坦地はあるものの基本的には上りっぱなしである。
最初数キロはきつい坂道のある人里という感じであるが、その後徐々に山深い趣となってくる。そして「ヤビツ峠登山口」などという標識が出て来、かつハイキングの人たちがちらほらとしてきて、山岳の雰囲気がいやがおうにも高まってくる。
私はヤビツ峠を上るのは初めてである。神奈川方面でサイクリングを楽しむ人たちのブログに必ずといっていいほど出てくるヤビツ峠を私はまだ上ったことがなく、今回話しのネタにヤビツ峠を上ることができて絶好の機会であった。
この日は曇っていて気温は低い。そのため、登坂中暑くならなくてよかったとはいえる。最初ここはそれほど激坂という感じではなく、一定の勾配を持つ坂が淡々と続くという感じである。そのため、サイクリストにとっては取り組みやすく、上っていてちょうど楽しい感じの坂だと思う。もっともそれは、あちこちのブルベでKitty Guyのような坂を上っているからであって、世間並みには結構きつい坂なのかもしれない。
それでも日ごろ鍛錬していない私は時速10km程度でヘロヘロと上る。その横を、「BEACH」のジャージを着た人たちがバビューンバビューンという感じで追い越していく。やはり日ごろ鍛錬をしていると坂で力の差が出るなぁと思った。
しかし、いくらヘロヘロと上っていても、歩みを止めない限りは高みに届いていくもので、徐々に周囲の空気が変わってきた。空気が何となくピリピリと冷たいのである。
そのうち、道路が湿ってきて冷たい固形状のものがパラパラと顔に当たる。雪だ。この日何と雪の中を走行している!! 天気予報ではこの日曇りのち晴れくらいの感じの天気だったのだが、ヤビツ峠の近くは雪なのか。
この日寒そうだったので、一応雨対策兼寒さ対策としてレインジャケットを用意していたのが当たった。
その後も激寒、雪、上り坂の三重苦の中をヤビツ峠目指してひたすら上る。しかも、私が予想していたよりもきつい坂である。う〜んこれは参ったと思っていると、突如として景色が開けて駐車場っぽいところが出てくる。これがヤビツ峠か?? と思うと実はそうではなく、「菜の花台」という見晴台であった。そこからヤビツ峠まではまだ2〜3kmほど先のようである。
しかし、そこからヤビツ峠までの勾配は若干緩やかになったようで、そこからヤビツ峠までは比較的上りやすかった。そんなわけで菜の花台からゆるゆると走ってヤビツ峠に到着する。
ヤビツ峠に到着すると、「丹沢大山国定公園 ヤビツ峠 761m」の立て札が見えた。その立て札に自転車を立てかけて写真を取っている人もいる(お約束である。)。ここがヤビツ峠かと思ってその立て札を見てしばし感嘆し、その後下りに入る。ところが、その下り、のぼり以上に困難だと思った。
まず悪路。オダックス神奈川の下国さんがこのブルベの試走で前後輪パンクの辱めを受けたほど道はでこぼこしている。時折穴ぼこが空いているので注意しなければならない。
しかも、雪が降ってウェットコンディション、さらにところどころ砂が浮いていて滑りやすい。
こうしたコンディションで下り坂を激走するだけのテクニックと度胸を持ち合わせていない私は、ゆるゆると時速30km程度で下っていく。
そして、悪路以上に難儀したのは寒さである。この日雪が舞い散るくらいの寒さでしかも日が全く照らないのでとても寒い。スピードを出したいのは山々なのだが、そうすると体感温度が下がってこごえるばかりになる。
のぼりだと自転車をこいで暑くなっているのでよいのだが、くだりだとそういうわけではなく、かつただでさえ冷たい空気が勢いをつけて押し寄せるので困ったものである。
とりわけ指先。ほとんど感覚がなくなる。場所によっては痛いくらい。時折かじかんだ手を息であたためるが、一度冷え切った手はなかなかあたたまらない。そういうわけで、ゆるゆると下る。その横をドヒャーズヒャーと快速走行していく一団の人たちが通り過ぎていく。なんともうらやましい。
そんなこんなで悪戦苦闘しながら徐々に高度を下げていくと、だんだん日が差してくる。高度が下がって日が差すと、何となく手が温まってくるように感じるから不思議なものである。
ようやくくだりが終わるとヤビツ峠の荒天がうそのように打って変わって穏やかな日が差してくる。広々としてかなたに山が見えるのどかな風景を目の当たりにしながら気分のいいサイクリングをしばらく続ける。
宮が瀬北原交差点を左折して、県道64号線を虹の大橋に向かって走行する。虹の大橋は、宮が瀬ダムによってできた宮が瀬湖にかかる橋である。どこがどう虹の大橋なのかよくわからない。橋についている柵に虹の絵が描いてあるからか。後で調べてみると、ここは「出る」スポットとして有名らしい。
キューシートに「虹の大橋 渡りしばらくして左折」とあり、虹の大橋を渡ってしばらくしたところに左に入るみちがあったので、そこを左折した。すると電柱に「鳥屋」という住所表示が出てきたので、キューシートに記載されている、次の左折ポイントである「鳥屋(津久井町鳥屋支所前)」にいたるのかと思った。
ところが、その道を行けば行くほど木々深い山道になり、何とか支所が出てくる雰囲気が全くない。「虹の大橋」を「渡り」、「しばらくして左折」したのに変だなぁと思って引き上げる。
おかしいなぁと思ってキューシートを改めてみると、ブルベ参加者がスイスイと通り過ぎたので、その人について走行する。すると、左折すると県道64号線に行く旨示した行先道標がちゃんとあって、そこを左折するのが正しいコースであることがわかる。
キューシートの「虹の大橋 渡りしばらくして左折」の記述に、「左折県道64号線の道標あり」くらいの注釈があってもよかったかなと思った。
そういうわけでズヒャーと走行し、さて次は「鳥屋(津久井町鳥屋支所前)」を左折だと思って走行する。すると、左折ポイントの「鳥屋」っぽいところに出くわしたのだが、いまひとつその「鳥屋」かどうかの実感が持てない。交番と郵便局が左折する曲がり角にあってやたら目立つのだが、「津久井町鳥屋支所」らしき建物が見当たらないのである。
これは変だなぁと思って直進するが、行けば行くほど田舎っぽくなり、「津久井町鳥屋支所」とは縁とおい風景となる。やはりこれはおかしいと思って引き返すと、ブルベ参加者が先ほどの交番と郵便局がやたら目立つ曲がり角をズビャーと快走していく。やはりここが「鳥屋(津久井町鳥屋支所前)」だったか。
う〜んここのキューシートでも「角に交番と郵便局」という注釈があってもよかったか。「(津久井町鳥屋支所)」よりも、交番と郵便局のダブル・セッティングのほうが明らかに目立つので。
5km程度の間隔の間で2箇所もミスコースしたため頭に血が上ってわけのわからないことを記述しているが、しかし前後輪パンクの辱めを受けてまで試走され、キューシートを完成させてくれた担当の下国氏には改めて敬意を表したい。
「鳥屋(津久井町鳥屋支所)」から2.6kmほど走行すると梶野T字路にいたり、「山中湖・道志」の道標に従って道志の方向へ行くといわゆる道志みちである。
ここからコントロールポイントまで26.5kmほど一直線である。ミスコースの心配は皆無である。しかし道のりは厳しそうである。私は数年前のブルベで、山中湖から神奈川まで戻る途中で道志みちを通り、山伏峠から40km近くずっとほぼ下りっぱなしだったことを記憶している。今回はそれを逆に進むので、これは40km近くほぼ上りっぱなしであるなと思った。
果たしてその予感は当たり、なかなか走行し甲斐があるアップダウン区間を含み、ほぼダラダラと上りっぱなしであるという印象である。ヤビツ峠もなかなかだったが、道志みちは距離が長い分たちが悪い。
神奈川県相模原市緑区青根にある神奈川県内最高点(451m)の表示にいたってここに峠を越えたかと安心したがとんでもない。その後もダラダラ上りは続き、時折それは壁のような坂になって牙をむく。しかもこの近辺時折向かい風となる突風が吹きすさび、上り坂と風に責めさいなまれて時折時速5km程度まで走行速度が劣化する。
スタート地点から第1コントロールポイントまで76kmと、日本のブルベにしては比較的長間隔なので、道志みちを走行しながらも相当腹が減ってきた。ややハンガーノック気味でパワーがでないながらも前へ前へと自転車をフンごくる。
そうこうしているうちに、第1コントロールポイントである「デイリーヤマザキ道志中央店」まで「4km」という看板が出てきた。「おおあと4kmで食事ができるぞ」と思って力を振り絞り自転車をひたすらこぐ。
ところが、サイコンの表示ではそこから4km走行したはずなのだが、周りにはのどかな田園・山間風景が広がっており、デイリーヤマザキのデの字の痕跡も見当たらない。一瞬力が抜けるが、気を取り直して再び走行する。自分の思うところと違うところに目標があることがわかっても、それでも前へと進まなければならない。ブルベも人生も同じことである。
そして前へ前へと進んでいればいつかは目標に達するところもまたブルベと人生の共通点(か???)、しばらく自転車をこいでいると、遠くのほうに「D」をあしらったマークが見える。第1コントロールポイントであるデイリーヤマザキ道志中央店だ。
ひとこぎ毎にその「D」マークが近くなり、ようやっとという感じでそこにへたり込むように到着する。大体正午くらいの到着である。そこには大勢のブルベ・ランドヌールの人たちが休憩している。さすがに100人近く一度に出発すると、いついかなるときでも必ずブルベ・ランドヌールに出会うことができて心強い。
さぁトイレだ食事だと勢い込んでデイリーヤマザキ道志中央店へと駆け込む。トイレを済ませてさぁサンドイッチだおにぎりだと売り場に赴くと、何と非情にも「本日売り切れました」の札が!!! この店の仕入れたサンドイッチやおにぎり、弁当その他食料品は、無残にも先に来たブルベ・ランドヌールによって食い尽くされていたのであった。
その棚には永谷園「カップ鮭茶漬け」が売っていた。ご飯と鮭茶漬けがカップに入っていて、お湯をかけると鮭茶漬けが食べられるという代物である。仕方がないのでカップ鮭茶漬けを主食とし、店先にあったフライドポテトでカロリーを補完しようとした。
ところが、店先にあったフライドポテトが実は最後の1つで、それも別のレジに来た客に私が頼む直前に取られていた。なんともすさまじい食料争奪戦である。私はブルベでこれほどの食料争奪戦に遭遇したことがない。ブルベ史上始まって以来の食糧危機である。
仕方がないので、チキンナゲットみたいなのを買い、その他お菓子類を非常食として買っておく。
時折ブルべのブリーフィングのときに、「コントロールポイントで食料がなくなることがありますので注意してください」といわれることがあり、「冗談でしょう」と思っていたが、これが現実化するとは思わなかった。
もっとも、それはコントロールポイントとなるコンビニがどこであるかにもよるのかもしれない。昔からヤマザキデイリーストアは品揃えが悪くて営業時間の短い(24時間営業のところをあまりみない)使い勝手の悪いコンビニだと思っていた。この激烈なコンビニ戦争の中、よくもまぁちゃっかり生き残っているなぁという印象がある。
そういうわけで、ここではヤマザキデイリーストアの品揃えが薄いと思い込み、とりあえずヤマザキデイリーストアに八つ当たりしておくこととする。
そういうわけで、品揃えが薄いながらも一応食べるものが売っていたためおなか一杯にすることはできた。とりあえず山伏峠までは手ごたえ足応えのある道である。しっかり休んだ後出発する。
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